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2017.05/05 [Fri]
祝!海の正倉院―沖ノ島の至宝が2017年の世界文化遺産登録候補に

世界遺産をめざして 海の正倉院―沖ノ島の至宝
~宗像三女神ものがたり~
嬉しいニュースが飛び込んできました。ずっと注目してきた沖ノ島の遺産が、2017年の世界文化遺産への登録を目指す候補として、決定しましたね!
本当に嬉しいので、慶びの気持ちを込め あらためて載せたいと思います。

夏の陽射しが翳りをみせ 秋風が吹き始めると、美雨のそわそわが始まります。
過去、毎年10/1日に合わせて訪れていたあの島と玄界灘。
何をさしおいても繰り合わせ訪れたかった・・・あのかたたちに会いに。
・・・あのかたと呼べるのかわからない、見えざる稀人(まれびと)なのですが。(笑)
いつごろから習慣になったかは定かではないのですが、昔から北九州の太宰府天満宮に報恩感謝と守護祈願にしばしば訪れていたのが、宗像(ムナカタ)さんとご縁をむすぶきっかけだったように思います。大宰府政庁跡も良かったですが、美雨は全く期待していなかった宗像大社の神宝館に強く心を動かされました。宗像大社の三女神の伝説と信仰をめぐり、それぞれの姫神の祀られる辺津宮、中津宮(大島)の神主さんや神宝館の学芸員の人達にたくさん良い話を聞きました。宗像さんの旅では秘宝の眠っていた玄海灘の島をクルーズし、筑前大島に泊ります。
今日は、文化庁の文化審議会が「再来年の2017年のユネスコの世界文化遺産候補として決定したのは、福岡県の“神宿る島”宗像・沖ノ島と関連遺産群」とのニュースを目にし、胸おどる思いで 宗像さん(ムナカタ三社)への憧憬をこめて、思い出を辿りつつブログに綴ってみたいと思います。
本家の奈良正倉院

ここで、海の正倉院と呼ばれる宗像さんの歴史的背景と文化財につていて少し触れてみます。
正倉院と言えば、まず奈良東大寺の本家、正倉院を誰もが思い浮かべると思います。
その奈良の正倉院について軽く説明を。
正倉院には奈良時代からつ伝えられた品が数多く保存されています。
有名なものに五弦のびわがありますね。びわに描かれた絵には熱帯樹の下で らくだに乗ってびわを弾く人物が描かれていますが、正倉院には、日本にない動植物を描いた器や織物などがあり、それらに描かれた絵の風物から、インドに始まり中央アジアから中国に伝えられたことがわかっています。奈良時代の日本に、そのころ栄えていた世界各地の国々とのつながりがあると思われる品々が在ったのです。そして、その正倉院に匹敵する、同時代に海を越えて渡って来た国宝指定8万点というケタ違いの所蔵量を誇る宗像・沖ノ島神宝は、まさに「海の正倉院」と呼ばれるにふさわしいと言えましょう。

五弦のびわ
地理的背景・時代背景と結びついた信仰についてすこし。(歴史が好きな人は読んでね)
日本は4世紀後半から10世紀初頭にかけて朝鮮半島や中国との交流により、国家の形が整えられてきました。
この交流にあたり玄海灘の真ん中、航路の中途にある沖ノ島で航海の安全を祈る大規模な祭祀が行われてきたのです。船にとって危険な玄海灘を航行する際の道案内や祭祀を支えたのが古代ムナカタ一族と考えられています。
祭祀に使われたと思われる4C後半~10C初頭にかけての神宝8万点が出土し、全てが国宝に指定されました。
4世紀後半、朝鮮半島や中国との交渉を進めていた大和朝廷は、玄海灘の航海技術に長けたムナカタ一族を必要とし、ムナカタ一族が信仰していた沖ノ島を同様に崇めたのです。島で発見された祭祀品8万点は、当時の最高級品や海外の貴重な文物を豊富に含み、大和朝廷がいかに島の祭祀を盛大に行わせたかがうかがえるものです。
ちょっとおさらいコーナー
ムナカタ一族の神域、沖ノ島で4世紀から600年にわたり行われた祭祀の形態
A.岩上祭祀(4~5C)

↓
B.岩陰祭祀(6~7C)

↓
C.半岩陰・半露天祭祀(7~8C)

↓
D.露天祭祀(8~10C)

☆お宝拝見☆
「金銅竜頭」

「金銅竜頭」:Cより出土。竜頭は一対であって、胴部をポール(竿)に挿して天がい(傘のようなもの)につりさげて用いたと考えられる。有名な敦煌の莫高窟の唐代の壁画にも類似品が描かれている。沖縄の首里城(世界遺産)にもよく似たものが展示されていたし、韓流ドラマで 高句麗時代のドラマや渤海王朝の始祖「大祚栄」(テ・ジョヨン)の結婚式にもポールをさした、この竜頭の傘の下、王と王妃が歩くシーンを見て驚いた覚えが。(笑)
↓
敦煌の莫高窟の唐代の壁画にも描かれている「金銅竜頭」

天蓋(かさ)のつる下げ接触部分に注目。この龍の口が。
拡大図

これすごいですね。感動しませんか(涙)
「勾玉」(マガタマ)

古代の代表的な祭貝。古い時期のものほど石質が良く、色もきれいである。
「三角縁神獣鏡」:Aより出土。神仏や霊獣の文様を凝らした古代の鏡

「金製指輪」:Bより出土。

朝鮮半島の新羅からもたされたもの。同類の指輪が韓国の慶州の王墓からも多数出土している。
「ガラス製小玉」(ビーズ装飾品)

ガラス製の小玉は我が国では弥生時代から作られていたが、当時は貴重な宝だった。
※上記例だけでもすごいお宝なのに、これらが国宝指定が八万点のごく一部という・・・宗像の至宝のスケールがどれほどもののか、「海の正倉院」と謳われる所以がしのばれますね。
海の正倉院の島々と信仰-現在の姿についてもふれてみたい。
8万点以上の神宝が発掘された沖ノ島は、いまだ十年に1回しか入島が許されていない島です。
頑なに守られた信仰と伝統が長きにわたり「神の島」であるこの沖ノ島を守ってきたのです。
入島するために素っ裸になり、海でみそぎをして、その年に選ばれたほんの数人の男子だけが上陸を許される聖域なのです。
そして、玄海灘の海上交通の安全を祈願し、懸命に海のシルクロード文化を伝えようと奔走する宗像の人々の精神を象徴しているのが、昔から続く10月1日の「みあれ祭」です。
三女神の社をめぐるため、何百隻もの船が一斉に玄海灘に漕ぎ出し、壮大な海のパレードが行われる、生きた祭です。
学術的には、平成18年、国内外で高く評価されてきた沖ノ島の宝8万点が全て国宝に指定され、沖ノ島祭祀(信仰)の意義が再認識され、発掘調査の増加により、人々の営みや対外交渉、祭祀を支えた人々の様子がますます明らかになってきています。
宗像大社を中心にこの島を含めた神域を世界遺産に登録したいという動きが活発になるのは当然といえましょう。
船のパレード祭り「みあれ祭

(みあれ祭の写真)
宗像大社の三女神の長女であるタゴリ姫に海上交通の守護を祈る伝統行事「みあれ祭」。
玄海灘を渡る壮大な船のパレードが繰り広げられる。
姫神たち(神輿)をのせた御座船をまもりつつみんなでパレード

玄界灘を船ですーいすい 携帯なのでボケててすみましぇん(>_<)

宗像の港についた御座船。雅びでした。
神を祭るための人々の行事はみあれ祭にとどまらず、市民参加型ミュージカルというユニークなイベントにも表れています。
一流の音楽監督や脚本家、振付、演出、演技指導家を招いて、プロ顔負けの舞台劇が街ぐるみで催される記念事業です。
その名も、ミュージカル『むなかた三女神記』。
美雨も飛び入りで参加させていただいた事がありますが、その質の高さと素晴らしい完成度に、感動ひとしきりでした。宗像の人達は、本当に神様が大好きなのですね。生まれたときから、沖ノ島の女神たちに祝福を受けていると信じてやまないひとびと。その信仰は、こうして毎年欠かすことなく海でのみあれ祭という船神輿パレードと、陸の人々の神々賛美ミュージカルという行事となって、連綿と受け継がれているのですね。
市民ミュージカルむなかた三女神記(マジで素晴らしかった!)

これこそが生きた文化遺産ですね ↑ミュージカルのパンフレット
書きたいことは山ほどあるのだけど、ひたすら長くなりそうなので、この辺で括ってみます。
最後に「沖ノ島至宝と宗像大社、そして信仰を守るひとびと」について。
すでに沖ノ島は発掘調査されていますが、それは島のほんの一部であり、真実を知るためにはもっと探索する必要があると思われます。けれど、一方でこれ以上神宝を島から掘り起こさずに「神の島」として手つかずのまま保存する方が、神の島にふさわしいのではないかとの複雑な思いも湧いてきます。
それを満たしてくれる手段として、上に記した「世界遺産登録」が心に浮かびます。
最も日本的な宝が出土しているだけでなく、自然と人間の調和ができているところだからです。
自然も、人間も、単体では生きれない。両者が複合し、数千年も融合し生き続けてきて、なおかつ今も生きている沖ノ島こと世界遺産にふさわしいと思うのです。
寂しいかな、日本には未だ複合遺産がありません。政府は自然遺産のほうに重きを置いていますが、これからの方向性は複合遺産だ、と早稲田大学教授の吉村先生も仰っていました。
複合遺産――などというと何やら難しそうですが、ようは自然と信仰(人々)が何千年も融合し生き続けてきて、いまも、そしてこれからも生き続けてゆくであろう遺産、ということです。
それをしっかりと具現しているものが、玄界灘のみあれ祭であり、沖ノ島三女神を賛美する市民参加型ミュージカルです。
宗像大社を中心に、この島を含めた神域を世界遺産に登録する日も遠くない事を、美雨もこころから祈ってやみません。
美雨
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